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From CEO

第23回 タイ国での会社清算 簡単ではありません

2017年12月5日


アルベリーアジアCEOの増井哲朗です。
事業を廃業・清算するという理由には様々のケースがあります。
企業の組織内部に起因する問題もあれば、取り巻く事業環境から廃業を余儀なくされる場合もあります。
本日は理由の如何を問わず、タイ国で会社清算を検討する場合の“簡単でない”状況を書いてみたいと思います。参考になれば幸いです。
まず、当該日系企業の全てが、倒産のように債権者や従業員に迷惑をかけることなく、支払うべきものは支払い、きれいに会社を閉じたいと考えています。これは企業の責任という点から重要なことです。だからこそ、きれいに言い換えれば問題なく円滑に会社清算に向かうための基本的手順を守らなければなりません
問題は、日系企業の多くが、特に日本本社側が、タイ国での会社清算を簡単な手続きで短期間に完了すると考えているケースが多く見られることです。
タイ国での会社清算のためのプロセスは大きく4ステージに分けられます
(私的に、4段階に分けて考えると、理解し易いと思います)
関係者の多くが、会計的な諸手続きに注意を向けて、意外と最初のステージ1と2は注意不足・軽視することになります。要注意です。
まず、ステージ1ですが、いつをもって会社を閉鎖するかを明確にしなくてはなりません。そこが、はっきりしないことには、全てのことが始まらないのは自明の理です。
それが定まって、最初に動かなくてはならないのは顧客との関係です。
定期的に部品を納入している企業では顧客との間で「基本取引契約書」が結ばれています。そこには、安定供給の義務にしたがい、もし、廃業するような場合には何日前までに書面で通知をするようにという条項が必ずあります。それを守らないと後になって、顧客から転注にともなう費用請求が行われるということにもなります。
また、「基本契約書」が存在しないような関係であっても、少なくとも一定期間は取引関係があった訳ですし、日本本社での取引相手というケースもありますので、まずは、お客様の関係を円滑に整理しなくてはなりません
次に従業員との関係です。上記の顧客通知と併行して、従業員に会社の決定を正確に伝え、解雇補償金を法律の要請に基づき、正しく支払う旨の通知をしなくてはなりません。ここで、大切なのは全員に書式をもって通知して、おかしな“風聞”などの発生を防止することです。
幸い、現在のタイの就職環境は完全雇用と言ってよい状況ですから、別の仕事先を探すのはそれほど難しいことではありません。長い期間勤務した会社への愛情、新しい職場に移る不安をできる限り軽減できるように心を配ることに尽きます。
だからと言って、労働者保護法に規定されている解雇補償金を越えて、補償金を考慮する必要はありません。一旦、この法律により規定された水準を越えてしまうと、従業員間で様々な意見が出て、収拾がつかなくなる可能性がありますので、禁じ手と理解すべきです。
各従業員と個人面談の形式で、解雇補償金の金額・支払い方法、最後の給与の支払い期日、未消化年次有給休暇の買い取り額などを明記した書面を各個人ごとに用意して、納得して署名をしてもらいます
お客様と従業員の関係が円滑に整理できれば、まず、ステージ1は完了です。
ここで、不満をもった顧客から転注損害金の要求があったり、従業員からの労働裁判所への訴えなどがあったりすれば、円滑な清算とはかけ離れた事態が生じます。思わぬコストと時間を無駄に使ってしまいます。
私は会社清算が決定しているという前提で、合弁企業の場合の「合弁先」との交渉を省きましたが、この交渉が本件に先立って行われて、相互に合意されているというのが大前提であることは言うまでもありません。
ステージ2に移ります。
ここでは、主に入居している建物・設備関係の処分を行います。
製造会社の場合ですと、レンタル工場の契約期間に要注意です。
結構な金額のデポジット(預託金)が戻るかどうかに関係して来ます。
また、レンタル契約の解除に伴い、借りていた工場の“原状復帰”の工事が始まります。貸し主と折衝しながら、できればデポジット金額の範囲で完了したいところです。
その他、一般的には社用車のリース契約、社員住居の賃貸契約、各種保険の解約業務があります。
言うまでもなく、あくまで“清算”ですから、残存の原料、仕掛かり、完成品だけでなく製造設備、PC等の事務備品等も全て売却できるものは売却して現金に換えて、債務の解消に当てなければなりません
資産の売却は基本的に「市価:マーケットプライス」での売却が基本となります。
当然のことながら、資産台帳に記載されている「簿価」との差が発生します。
簿価よりも高価に処分できた場合は税金VATが増える方向ですので問題は無いのですが、簿価よりも安価にしか処分でき無かった場合、それが「市価」として適正な価格であることを税務署に説明できなければ、VATは簿価をベースにして掛けられて来ます。この辺りにも注意が必要です。
なお、BOIから恩典を受けている企業では、BOIへの清算に関する届出・手続きが必要になります。当然のことながら、恩典により関税無しで輸入された設備については、関税の支払い等の手続きが完了してからでないと、移動は認められません。
また、ステージ2でやらなければいけない重要なこととして、本社の移転手続きと、清算完了まで勤務してくれるタイ人スタッフの選択と確保です
タイ国での清算は、全てが完了するまでに、決断して手続きに入ってから、18ヶ月から24ヶ月程度の日時が掛かります。最初から12ヶ月が経過して、一定手続きが完了した後は、清算管理人と残った従業員が業務に関わることはなく、日本への帰国、従業員は他社へ就職したとしても問題はありませんが、税務署からの連絡等には応じる体制の維持、書類の保管場所の確保等をしておく必要があります。
次にステージ3です。
ここで述べることが、日本本社で一般的に考えている「清算手続き」と言えます。
まず、株主総会の招集、総会での会社解散決議、清算人の選定(一般的には最後の現地法人社長)、商務省への廃業通知、税務署関連ではVAT登録の解除の申請を行います。商務省からは「廃業手続きに入った」ことを証明する英文証明書を入手することができます
そして、前述の資産整理をしながら、清算決算に向かいます。
銀行口座の閉鎖もこの時点で視野に入って来ます。そして、最終的に「清算決算書」を作成して、監査法人の監査を受けて、清算人が署名して商務省に提出します
この時点で、登記簿謄本には清算決算が受領された旨の記載がされます。
この時点では、日本側のタイ法人の撤退にともなう損失(資本金・債権放棄)が明確になりますので、日本側会計士・税理士と相談して、日本側での会計処置と税務処置のために必要なタイ側書類の準備を行います。
この後がステージ4となります。
ここでは、タイ国税務署の税務監査を待つことになります
この清算決算の登記完了後も、税務署に対しては税務申告を続けなくてはなりません。そして、税務署の税務監査を待つのですが、いつ行われるのか明確ではありません。これも、タイ国での会社清算の完了までの期間が長くなる要因です。
やはり重いテーマですので、簡潔に書こうと努力しましたが、長い文章になってしまいました。最後まで、お読みいただきありがとうございました。
お伝えしたかったのは、タイ国での会社清算は簡単ではなく、煩雑な手続きが続きます。それと、どこから手をつけたら良いのかが分からないまま、時間が経過して、さらに事業環境が悪化してしまうということもあります。
最終選択として、会社清算を選択されたら、円滑に手続きの完了を目指すことが重要なことです。そのために、予想以上にステージ1と2の部分が重要であり、集中を必要とする事項が多いことをご理解いただけたと思います。
また、日本本社側での損失は、タイ法人の会社清算を証明する書類の提出で「海外子会社の清算にともなう損失」として損金算入が認められます。その辺りの大局的な視点も、タイミングを図る意味で重要だと思います。
今日はこの辺りで筆を置きます。