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Alberry Asia Co., Ltd.は貴社のタイ進出をトータルサポートいたします

From CEO

第3回 4っつの「あ」

2012年11月12日


アルベリーアジア代表(CEO)の増井哲朗です。
第3回の話を始めたいと思います。
先回、「異文化の中での経営」というお話をしました。
この言葉だけとらえると、ずいぶん抽象的な感じがすると思います。
そこで、今回は私の経験からお役に立ちそうな話をしてみます。

私がアルミ総合会社である日本軽金属からアルミホイールを生産するエンケイに転職して、タイの現地法人に着任したのは1996年のことです。
ですから、今から16年前のことになります。

着任早々、お客様への見積書を作成する仕事があり、タイ人スタッフにコピーを頼んだときのことです。
その頃のことですから、コピー機自体が古く性能も良くないことは理解するとしても、届けられた見積書は、紙は汚れて少ししわが寄っている、コピーのトナーは全く不要な箇所に黒く付着しているというような状況で、とてもお客様に出せる代物ではありませんでした。

タイ人スタッフに注意すると、私が何を注意したいのかが分からない風で、一言「読めるのに」と言ったのです。これは、私にとってはかなりショックでした。
確かに「読める」ことは提出物の最低クリアーしなくてはならない条件です。
ただ、日本人の私たちは、どこかでそれ以上のこと、きれいに整った書類でこちらの「心意気」「真摯な姿勢」などを、お客先にアピールしたいと考えています。
私たちには、祝儀袋の中には、新しい紙幣を入れるという習慣もあります。

「読めること」対「読めるのは当たり前で好印象を与える」書類という、まさに異文化の考え方のギャップを目の当たりにして、何とかして、この差を埋めていかなければ、日系企業としてのDNAは霧消してしまうという危機感を持ちました。
ただ、郷に入れば郷に従えも、また真実です。
そこで、日本とタイの文化の両方に理解のある、著名なタイ人コンサルタントと契約し、経営改善のお手伝いをお願いすることにしました。
この方(仮にP先生とします)は東京大学で建築学の博士課程を修了した方で、日本語は話すだけでなく、完璧に読み書きをこなしました。

P先生は当時45歳ぐらいでしょうか。私が48歳という時でした。
二人三脚で日本とタイという異文化同士の仲間が、どうしたら最高のパフォーマンスを出せるか、いろいろなことをやってみました。

最初に、P先生から「今、この会社に働きに来ているタイの人たちは、この国でのサラリーマン第一世代です。父親はほとんどが農業、小商店主などです。ですから、毎日決まった時間に決まった場所に来るというだけでも、大変なことなんです」という話がありました。
確かに日本では、サラリーマンは何世代目になるのでしょうか。
定時に会社に入る、疑いも無く当たり前のことです。一方、タイでは出社することだけでも、凄いことなんだと、その時、妙に感心してしまいました。

ある時、P先生と話している折、異文化の中で働く日本人が気をつけるべき事柄を、簡単な言葉で表せないかという話をいたしました。
そして、「あ」から始まる4つの言葉、「あわてない」「あきらめない」「あせらない」「あなどらない」が実行・実現できれば、異文化の中の仕事は、概ねうまくいくだろうという結論になりました。

「慌てない」
異文化の中で仕事をしていると、生産会社の場合は、なぜ、こんな機械の壊れ方を
するのか、ポカよけの装置も外されているし、信じられない・・・、販売会社では形も色も違うのになぜ、誤梱包が起きるのか、信じられない・・・というようなことがよくあります。
その時に、リーダー役の日本人が慌ててしまっては、タイ人の動揺は増幅してしまいます。
ですから、大概のことでは慌てないという姿勢を見せることが大切です。

「諦めない」
現地の人に技術やノウハウなどを教える、また、トレーニングなどをする場合に、あまりにも進捗が遅かったり、また、せっかく教え育てた人材が退職してしまったり、こうした事態が起きると、どうしても「しょうがないか、ここは日本で無く、タイだから」と諦めの気分が芽生えます。
ここで、踏みとどまって発憤しないと、赴任している日本人も、教えを受けるタイ人も不幸になってしまいます。

「焦らない」
特に、日本人幹部クラスに多いのですが、早く手柄を立てて、日本(本社)に戻りたいという気持ちから、過大な要求をタイ人スタッフにしてしまい、反発されて、業務成績が上がらないということがあります。
最悪の場合は、当該赴任者の排斥運動に発展するケースもあります。
ですから、海外赴任期間を「駅伝」と捉える感覚が必要です。
自分に任された期間をしっかりと走りきって、次の人にタスキを渡すという気持ちで仕事をするのが良いと思います。

「侮らない」
日本人は欧米人には、気後れすることがあるのですが、アジアの人たちに対しては妙に横柄な態度を取ることがあります。
これは、現地で仕事をすれば、すぐに分かることですが、彼ら彼女らは仕事に関する教育を受けていなかっただけなのです。
しっかりとトレーニングを受ければ、日本人よりもよほど優秀な人がたくさんいます。
絶対にそこを勘違いせずに、常にタイ人スタッフと目線を合わせて話をするということが重要です。
上から目線は絶対にいけません。

私は、前の会社では、海外拠点に赴任する人達に、必ず、この4つの「あ」を心に刻んで業務に精励して欲しいということを伝えて来ました。
現地赴任後、迷ったとき、手詰まり感のあるとき、眠る前のひととき、この4つの言葉を思い起こして、自分のやり方を検証して欲しいと話してきました。
おおむね、好評だったように思います。

具体的な問題点は各社各様でしょうが、異文化の中での経営という切り口では上記の心構えは有効だと思います。
お役に立てば幸いです。

第4回では、「いつか来た道」という表題で話してみたいと思います。
では、今回はこれで失礼いたします。